子連れ狼 三途の川の乳母車

r-h-t2005-11-19


これまたCATV「時代劇専門チャンネル」でまたまた再見。

私にとって「子連れ狼」といえばやはりヨロキンのTVシリーズが第一位(ちなみに第二位は東野幸治。いい意味でも悪い意味でも)。よってトミさんのこれは結構最近まで未見だったのだが、やはりこの映画は何時見ても強烈。

タランティーノキルビルでパクリまくり)もサム・ライミも大きな影響を受けたとのことだが、この映画を編集しアメリカで公開したロジャー・コーマンは「この映画を作ったヤツはとんでもない天才か、あるいはとんでもないキ○ガイだ」と評価したらしいが、映画を見、更にこの映画に関わっているのが三隅賢次と勝新と聞けば、恐らく100人中100人の日本人は「絶対に後者」と答えるでしょう。

スジは、この際どうでもいいんですが「子連れ狼」のプロットである。
○一刀と大五郎の父子愛
○柳生VS一刀
○一刀の腕貸し
で話が進んでいくと思ってください。

拝一刀がその太刀を振るうたびに相手の手足がボトボトボト。んで切り口からは血が噴水状にプッシューというのが、なんと映画の基本線。この他、柳生の女軍団がその腕を見せ付けるために一人ぶっ殺すんですが、耳・鼻・両腕・両足とそぎ落とす「ジョニーは戦場へ行った」状態。その女軍団が一刀親子を襲う際も農民に化けた女軍団が何故か持っている大根を投げる。仕込みでその大根の中に刀が仕込まれてるんだが、何故か大五郎の乳母車に刺さるときは大根の形のまま突き刺さる。

他にも、大五郎の乳母車は刃物仕込みまくりで、刺客に大五郎の乳母車が突っ込み、車輪から飛び出した刀で刺客の足を足首から切断(足首から下は地面に立ったまま・・・)したりとやりたい放題。トドメはラストでの頭分断殺に至るまでスプラッター描写のオンパレード。

多分、勝新はサービス精神が服を着て歩いているような人だったとのことだったので、突き詰めすぎてオカシな方向に走ってしまった極例のような映画。大殺戮時代劇といえばちょっと前に三池崇史の「IZO」を見たが(これは純粋なスプラッター時代劇とは言えませんが)、やはり根本的に違うのは三池崇史スプラッターな殺陣を使ったり中山一也を主演に据えたりするのは観客に対する挑発であり、観る対象を制限する為のものであるのに対し、勝新−三隅の今作は「お客さんに喜んでもらおう」とするサービス精神の行き過ぎた形なのである。だからこそ我々のようなキ○ガイにこの映画は愛される。偏愛される映画の共通点とは「イってる」ことと「迷いがない」ことなのである。だからこそ腕がもげようが血飛沫飛び交おうが、ストーリーが暗かろうが何か異様な爽快感に包まれている不思議な映画。

あと、やっぱりトミさんの殺陣が素晴らしい。スタイリッシュ。やっぱり昨日今日殺陣を習ったデカイ白人女のもっさりした殺陣よりは観てて全然気持ちがいいっす。

自らのアイディアやパフォーマンスに何ら疑いを持たない男、勝−三隅−若山(トミさんは常識人だったらしいからちゃうかもしれませんが)。そういう意味ではひがしのりが「ごっつ」で演じた「センセイ」はあの3人の「イズム」を継承している。「西川君」を溺愛するのもちゃんと子連れ狼のプロットに合ってるし。

映画のイっちゃってるニオイに引き寄せられたか、岸田森もちゃっかり出演。