岡田彰布

r-h-t2005-07-12


思えば、早稲田でキャプテンを務めた人である。
思えば、星野仙一野村克也仰木彬という日本プロ野球史に残る名将の下で監督学を学んできた人である。
思えば、藤田平中村勝弘・村山実といった「監督としてそれやっちゃイカンだろう」というケーススタディを死ぬほど目の当たりにしてきた人である(ノムさんも入るかな?)
思えば、ドン・ブレイザーや吉田義男といった微妙な監督の微妙な采配も見てきた人である。

二軍監督としては既にこれ以上無い実績を残している人であり、監督就任二年目で今の好成績は「星野が連れてきた面々に引っ張られているだけ」だの「金本の姿勢に若手が心酔して自らが意識改革を行った結果」とか「やっぱベンチに島野がいるといないではこれだけ違うもんか」とか「藤川の化け方と、優勝した年の『最悪今岡』の化け具合と、どっちが信じがたい?」とか、なかなかその風貌からか監督の評価に直結しない。藤山直美以上に藤山寛美に似ていることもアダとなっているのかもしれない。

例の美人局事件がなければひょっとしたら5年くらい前には監督になっていたかもしれず、しかしながらアレがなければ仰木とも星野とも出会わなかったかったかもしれないわけで、そう思うと5年前にもし監督になっていれば藤田平みたいな事態になっていたかもしれないと思うと、人の運命ってわからんもんやなあと思う。

ところで、この岡田彰布という人。私はこの人、何があっても許す。

何年か前の岡田のインタビューで、岡田は幼少の頃甲子園にT−G戦を見に行ったときのエピソードを以下のように語っている。

「俺は甲子園に行くと必ず少ない小遣いはたいて3塁側のベンチ上の席に陣取るんよ。なんで3塁側(ジャイアンツ側)かというと、目の前で長嶋さんが3塁守るやんか。やっぱりあの頃のジャイアンツの中心選手は長嶋さんで、いつもエエとこで打ちよる。ファインプレーもしよる。だから俺は三塁側から長嶋さんを野次り倒すんよ。長嶋さんが動揺してエラーでもしたらと思って。だから声と目の届く3塁側からベンチと長嶋さんにガンガンやるわけや。あと、3塁から見た方が阪神の選手もよう見えるしね」

これである。このへんが「31番は長嶋さんの3と王さんの1♪」「初めてTG戦でヒット打ったときは長嶋さんに近づきたくて3塁まで暴走してアウトになった。でも、長嶋さんにタッチされちゃった。テヘっ(はあと)」などとのたまう、CGなみの技術でゲーハーを取り繕う某氏と「今でも巨人の選手とは球場で口を聞かんようにしてる。だって俺が甲子園にTG戦見に行ったときに阪神の選手が巨人の選手と談笑しているの見るとはらわたが煮えくり返ってたんよ。『俺がこんだけ巨人の選手野次ってんのに、オマエら何してんねん!』ってな」と男泣きコメントを残す岡田との違いである。さてみなさん。どっちが「ミスタータイガース」と呼ぶにふさわしい男ですか?

阪神が好き」というその一念だけで野球をやり、逆指名も何もなかったころのドラフト突破して阪神に入団し、阪神でボロボロにされながらもオリックスの好条件を蹴って阪神に戻り、そして今、自ら将となって阪神を優勝させようとしている。阪神ファンとして、これが泣かずにおれまいか。もしこの後ボロボロ負けて優勝できなくても、それはそれで許す。

そういう意味では、一番「村山実イズム」を継承しているのは岡田彰伸かもしれない。